大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(う)747号 判決

被告人 船橋弘

〔抄 録〕

そこで記録を調査して検討するに、自首は、刑の任意的な減軽事由たるに止まるから、原判決が自首減軽をしないからといってこれを事実の誤認や法令適用の誤りということはできないうえ、自首として刑の任意的減軽を受けるためには、犯罪事実及び犯人が捜査機関に発覚する前に自首のなされることを要するものであり、右にいう犯罪事実とは、刑罰法規に触れる違法な行為の意味であって、それが如何なる刑罰法規に触れ、如何なる罪名にあたるかという法律的評価に拘束されるものではないと解するのを相当とするところ、記録によれば、被告人は、勤務先会社の領収証を偽造行使して客の富田真一の妻似満より土地販売代金の中間金として四〇〇万円を受取りこれを詐取したという嫌疑をうけて逮捕、取調べをうけた結果、右金は被告人が会社のため集金して保管中着服したものであることが判明し、業務上横領罪として起訴されるに至ったものであることが認められ、被告人の自供により本件公訴が提起されたものであることは所論のとおりであるけれども、右業務上横領の公訴事実は当初の詐欺の被疑事実と全く別個の新たな事実ではなく、被告人が客の富田似満より土地代金の中間金として四〇〇万円を受取りこれをわがものにしたという違法な行為を基盤としている点において両者は共通しており、ただその法律的構成を異にするに過ぎないから、捜査機関が右違法の行為を本件のように詐欺罪と評価して被告人を逮捕したとしても、すでにその時点において、被告人の行なった右違法の行為は捜査機関に発覚していたわけであるから、捜査機関の取調べに対し、被告人が欺罔の意思を否定し、横領罪の評価に沿う供述をしたため、その自供に基き業務上横領として本件公訴が提起されたとしても、右自供を以て自首ということはできないというべきである。従って、論旨は理由がない。

(石田 瀬下 小瀬)

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